教育委員だより No.2

平成13年9月10日

小牧市教育委員会委員  朝倉 義文

「嫁の躾」

 最近は「あいさつ」が出来ない子供が増えています。(子供だけでなく、大人でもあいさつできない人がたくさんいます)親にすら「ただいま」と言わない。ところが飼っている犬には言うそうです。どうして犬には言えて母親には言えないのか? と聞いてみますと、「犬は返事をしてくれるから」と答えたそうです。

そういえば、私のうちでも女房が機嫌が悪く、あいさつを返さない日があっても、飼い犬はいつも喜んでワンワンとあいさつをしてくれます。たとえ無産階級である子供でも老人でも、自分が「無視されたくない」という気持ちを持っています.注目はして貰わなくても、無視はされたくないという最低限のプライドがあります。

さて、「秋ナスは嫁に食わすな」という言葉が昔からありますが、この意味にはいろいろあるようです。「こんなに旨いものを憎い嫁に食べさせてあげない」という合理的な説明とか、「秋ナスは種が少ないから、食べると子供が出来ない」という迷信説、あるいは「秋ナスは体が冷えるから」という健康説とかです。

近所に今どき珍しく嫁と姑がとても仲が良いと評判の家があり、先日ある会合でそのお嫁さんと会った時に、姑とうまくやる秘訣を聞いてみました。「別に人にお話しする程のことではありませんが、強いて言えば私はいつもお母さんに注目していますよ、ということを言葉や態度でアピールします」「例えば、どんなささいな会話でも、言葉の前と後ろに姑に呼びかけるフレーズをつけるのです」

『お母さん、今日は雨かしら、お母さん』

『お母さん、買い物に出ていいかしら、お母さん』

『お母さん、この服ハデかしら、お母さん』

子供であろうと誰しも、自分が無視されることは寂しいものです。いつもあなたのことを注目しているのだよというシグナルを送ってあげることが、受ける側にも自信をつけさせ、人間関係をより良いものにするのだと思います。

蛇足になりますが、いろいろな会合に参加した時は、なるべく多くの参加者を主役に取り立てることができる幹事のことを名幹事というのでしょう。思い出してください。これまでの楽しいパーティーのことを‥‥ それは、たいていあなたが主役であり、主役モドキだったはずです。

老人をいたわるということは、何も物理的にお金をかけて、生活環境を整えてあげるということではなく、周囲の若い人たちがいつも『注目していますよ』というシグナルを発することが、老人たちに生きてゆく喜びを与えることになるでしょう。同じように、不登校児や暴力っ子も、「注目されたい」「無視されたくない」という表現の手段を行使しているのかもしれませんね。

目次へ戻る