教育委員だより No.14

平成13年12月20日

小牧市教育委員会 教育長 副島 孝

生涯学習担当者の悩み

教育委員会の守備範囲は、想像以上に広いものです。多くの人は、小中学校や幼稚園関係の仕事が大部分だろうと考えておられるようですが、事実はかなり違います。庶務課や学校教育課は、重要な課ではありますが、十ある教育委員会にある課や施設のうちの二つです。他の八つは、生涯学習関係のものです。生涯学習課、まなび創造館、図書館、味岡・東部・北里の三センター、文化振興課、体育課の八つは、それぞれ市民向けに多くの活動を行っています。

もう学校教育だけの時代ではない。生涯にわたり能力・適性や意欲・関心に応じて学ぶことのできる生涯学習社会を実現しようと、日本中でいろいろな取組みが行われています。例えば、いろいろな講座です。各自治体で取り組み、多くの参加者を集めています。しかし、担当者は悩みを抱えています。参加者に満足してもらうための苦労なら、担当者にとっては働きがいであって悩みではありません。悩みは、行政としてどこまで取り組むべきかが不明確なことです。

そんなことは悩みでもなんでもない、住民のニーズに応えてどんどんやればいい、それも出来るだけ無料でとは、必ずしも言い切れないのです。行政が民間でできるカルチャーセンター的なことはやるべきではない、民間でできることは民間に任せ、行政はもっとスリムに、という声も大きいのです。一方では、もっとこんな講座も、あんな講座もやってほしい、他の自治体ではこんなこともやっているのになぜやらないのか、という要望も非常に多いのです。これが、民間に代わりを求めるのが無理な地方の自治体なら、悩むことはありません。しかし、小牧市のように、大都市にも近いし、市内にも代わりがある、市がやらなければ代わりができる地区では、この悩みは深刻です。かつて私は、この地域の自治体の生涯学習担当者のお世話をする仕事をしたことがありました。そこでは、自分のやっている仕事をどこまで進めるべきかという悩みが、異口同音に語られました。

体育関係でも同じです。例えば市は、まなび創造館やパークアリーナ小牧に、フィットネススタジオやトレーニングジムを持っています。私もよく利用するのですが、健康維持には本当に役立ちます。しかし、民間のフィットネス施設とは競合します。運動後にシャワーしかないので、もっと安くという声もあるようです。別の人からは、ある程度のお金を取るからこそ、意欲を持って続けられるのだ、と聞かされたこともあります。料金設定ひとつをとっても、迷うことばかりです。

現在のところは、(1)入門的な講座で愛好者を増やすことは市の仕事だろうが、応用的な講座の開設は慎重に検討する、(2)受講料については無料ではなく、資料等の実費はいただく、など大まかな方針で活動しています。それでも、具体的な個々の事業については迷いが多いのが現実です。図書館には、新刊書やCD・ビデオなどへの要望が強いのですが、それが本当に必要な図書館の役割なのだろうかと考えると、また悩みの種です。市民会館や市民センターで行っている文化事業も、要望が強い反面、自分たちの手でこうした事業を企画する市民グループからは、「市では、あまり多くやらないで」という声も寄せられています。

生涯学習自体は、着実に進んでいます。市の各施設の直接事業はもちろん、地区の会館や小学校の空き教室を利用した生涯学習キャンパスなどを拠点として、創意工夫を生かした活動が活発に行われています。こうした活動を通じて、新しい市民や地域のつながりが生み出されています。特に、これからは学習した地域住民が講師として活躍できる、市民主役の取組みが大切だと思います。よく言われる地域の教育力も、こうした取組みのなかで高まっていくのではないかと、私は密かに期待しています。

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