教育委員だより No.17

                                                           平成14年1月21日

                                         小牧市教育委員会委員長職務代理  山下 豊子

言葉を発して

昨年の夏、幸運にも若い人と旅する機会を得、小牧市国際交流協会ジュニア会員海外派遣事業でボルネオ島へ行きました。10人の小・中・高校生が参加しました。若い人は周囲に無関心で、コミュニケーションが下手だと言われていますが、旅行中温かく豊かな心をたくさんかけてくれました。「荷物を持ちましょう」と声をかけてくれたり、水着姿の私を「人魚のように美しい」と誉めてくれたり、UNOというカードゲームに誘ってくれたりしてくれました。さらに、私が無くしかけていたことを気づかせてくれました。それは、何事にも正面から真摯な態度で立ち向かうということです。

ボルネオでは力強い大自然に触れ、どこにいても深い緑に囲まれました。同時に、人間が便利さを追い求めるために木がたくさん切られ、森林がものすごい速さで無くなってきているという現実も知りました。サンダカンには、セピロックオランウータン保護区があります。森林が無くなったため住処を無くしたオランウータンや、不法捕獲のために親から引き離された孤児オランウータンを保護しているのです。

日本に戻ったあと、この旅行に参加した高校1年生女子から手紙をもらいました。手紙に書かれていた一部を紹介しましょう。

「オランウータン保護地区で人間の自己中心的で傲慢な姿を知って、人間が嫌でキライに感じました。けれど、このようなすばらしい体験ができたのは人とのつながりや大人のおかげで、現地のガイドさんや学校の皆さんと出会ったときは人が好きだって思えました。人間は矛盾した生き物だけど、人の愛情、やさしさを求め、与え、出会いを大切にしたいと思うのです。いつか、全ての生き物が幸せで、誰を信じても裏切りのない平和で不安のない世界を目指していこうと思うのです」

自然教育センター内で「オランウータンの最も恐れているものは何?」という問題がパネルに書かれていて、その隣の小さな扉を開けると、そこに答えが書いてあります。彼女がその扉を開けたときに、自分の顔が映りました。それで、人間のエゴに気づき悩んだのでしょう。彼女はある時間をおいて、結局人間の弱点もひっくるめて愛しようという結論に達したようです。この旅では、たくさんの人との出会い、交流があり、心のコミュニケーションの大切さとその喜びを知ったからです。

新しい年を迎えて、2002年の目標を何にしようかと考えました。この手紙の中の「出会いとコミュニケーション」という言葉が印象深く私の心の中に残っておりましたので、私も「人との出会いを自らできるだけたくさん作り、言葉を発して心の交流を図ること」を今年の目標にしようと思います。心の交流があれば、全て馬(うま)くいくと思うのです。なぜならば、何事も人の心が動かしているからです。

「言葉を発して心の交流を図る」ことに関しては、テネシー・ウイリアムズが「やけた(映画は熱い)トタン屋根の上の猫」の中のマギーのせりふを通して、”Silence about a thing just magnifies it and it grows festers in silence and it becomes malignant”と言っています。私の好きなせりふですが、小さな問題も沈黙、すなわち話し合いをしないでほったらかしておくと、だんだん大きくなり悪性腫瘍のように取り返しのつかないことになる、という意味のことを言っています。同じ日本人同士でも生き方が多様化している現在、しゃべらなくても分かるというわけにはいかなくなっていると思うのです。誤解が生じる危険性もあります。ですから、自分の伝えたいことを最も的確な言葉を選んで正確に伝えるようにする。そして、相手の言おうとしていることを分かろうと聴く耳を持つ。こんなことを今年の目標にしようと思います。

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