教育委員だより No.26

                                                                          平成14年4月16日

               

                    小牧市教育委員会教育長  副島 孝

子どもへの愛情


今年度は、学校週5日制と新学習指導要領がスタートしたことで、さまざまな議論がなされています。すでに何年間もかけて準備してきたことですから、余りじたばたせず、こういうときこそ原点に戻った議論が必要ではないかと感じています。


 最近ある私立幼稚園の先生とお話する機会がありました。私は教職の経験が長かったので、学校のことは一応理解しているつもりです。しかし、幼稚園に関しては、自分の子どもが保育園に通っていたこともあり、それほど詳しいとはいえません。ですから、機会があればいろいろ話を聞くように心がけています。特に、最近のように小1プロブレム(これも嫌な言葉で、かえって現実を正しく見えなくさせているのではと感じているのですが)と呼ばれるように、幼稚園や保育園から小学校にあがる段階で、学校生活にスムーズに適応できない子が増えていると指摘されています。

その先生のお話によると、年度始めになると、私立幼稚園では通園バスのコースとお迎えの場所決めが大仕事だそうです。その際、どうしても自分の家の玄関先までバスが来ないと納得されない保護者もみえるようです。なかには、バックでないと入ることができないような道であっても、玄関先までバスを入れることを強く要求される方までいるそうです。私たちのように学校育ちの人間には、小学校入学後の自分の足で歩くことによる子どもの成長への効果を実感していますから、「そんなことには妥協しませんよね」と言うと、なかなか強く言えなくて要求に屈しがちなのが私立だとのことでした。


きっと保護者の方は、子どもへの愛情として主張なさっているのでしょう。しかし、バスは決められた時間内に、子どもたちを安全に幼稚園に到着させなければなりません。確かに家から少しでも離れていれば不便でしょうし、雨のときなど待たねばならないこともあることでしょう。しかし、私には、これが大事なことなのだと思えるのです。少しずつ我慢しあう。ほんの小さなことへの気づきから、季節の変化を感じる。近所の人に会ってあいさつをする。こうしたことの積み重ねが、子どもを成長させるのです。


よく体験学習の必要性が語られます。小牧市でも、体験の場を充実させていきたいと考えています。体験の効用はいろいろ言われますが、私は単純にのどが渇いたときに飲む水のおいしさを感じさせてあげるためと考えています。おいしい料理やおいしい飲み物もいいのでしょうが、空腹やのどの渇きがいちばんのごちそうであることを、子どもたちに経験してもらいたいのです。これが私なりの子どもたちへの愛情です。甘い味がついてないとおいしいと感じられない子どもには、育ってもらいたくないのです。

最近また、幼児虐待のニュースを聞くことが増えました。子どもを愛せない何という親だとお思いの方が多いでしょうが、子どもへの愛情が歪んだ形で出ているのでは、と私は感じています。子どもへの愛情があるなら、正しい行動がとれるわけではありません。それがどんな結果を生むかを想像できることが、大人の条件ではないでしょうか。

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