教育委員だより No.34

                                                         平成14年7月24日

                                                小牧市教育委員会教育長  副島 孝

評価と少人数授業・習熟度別授業

夏休みが始まりました。夏休み前には通知表があります(学校週5日制開始の今年は、2学期制にして夏休み前の通知表はなしという学校も県外ではあったそうですが)。今年度から絶対評価に変わったことを強調する向きもあるようですが、これまでも決して機械的に相対評価をやっていたわけではありません。評価という微妙な問題をあまりに興味本位に取り上げることは、あまり有益ではないというのが私の考えです。

評価は難しいものです。人が人を評価すること自体が不可能とまで言い切る人さえいます。しかし、だからと言って評価をしないなら、別の問題が発生するでしょう。その時点その時点での評価は可能だと、私は考えています。言い換えれば、人間そのものを評価するわけではない、ある一定の期間の取り組みは評価できるし、評価すべきだと考えるのです。つまり、あなたの国語の能力はこうだと評価することはできないし、やるべきではない。しかし、あなたの1学期の国語の学習の結果を評価することはできるし、やるべきだと考えるのです。

通知表は能力を判定しているのではない、学力を評価しているのだということでしょうか。「学力」の定義自体、あまりにも多様で混乱しています。「学力」は英語の「achievement」の翻訳語であり、その名のとおり「学校で教える内容」についての「学びによる到達」を意味し、「学びによる到達」は通常テストで測定されるという定義があります(『学力を問い直す』佐藤学、岩波ブックレット)。日本語の「学力」の力という漢字が、機能としての力を実体として認識させがちなために、論議を混乱させる結果をまねきやすくしている側面があります。

さて、問題は評価そのものではなく、その評価をどう指導に生かすかということです。そのために最近は、少人数授業とか習熟度別授業が積極的に導入されるようになりました。さっぱりわからない授業を受けつづけなければならないのは、子どもたちにとっては苦痛以外の何ものでもないのかもしれません。それなら少人数授業なら解決かというと、そううまくはいきません。現状の40人学級は、世界的に見るとかなり多すぎると思いますが、30人学級になれば現在のさまざまな問題が解決するというわけにはいかないでしょう。

習熟度別授業は、さまざまな問題点を抱えていることも事実です。よく言われる劣等感を持つというのは、工夫すればそれほど問題ではないと思います。固定化しない、人数を無理に平等にしない、指導が難しい基礎的なクラスの指導者を重視するなど、考慮すべき点がいくつかあります。能力別指導と呼ぶ人がいますが、これには全く賛成できません。その時点での到達度と能力を固定的にとらえることはおかしいですし、実態としても適当ではありません。朝日新聞の調査(7月23日)によれば、習熟度別授業について、「増えたほうがよい」が62%、「そうは思わない」は28%となっています。賛成の理由の最大は「理解が遅れている子が減るから」で32%、反対の理由では「優越感や劣等感が生まれる恐れがある」が最大で12%となっています。観念的な反対はなくなってきたと言えそうです。逆に実際的な効果が求められていることになります。

ただ現状は、習熟度別授業にしても少人数指導にしても、非常勤の先生で対応しなければならないなど、制度的な問題点は少なくありません。また、学力論議のなかで、反復練習だけで基礎的な学習は解決できるような荒っぽい議論がありましたが、そんなことをしたら子どもたちの学習離れはますますひどくなっていくことでしょう。反復練習だけと言われている学校(たとえば、百ます計算で有名な兵庫県の山口小学校など)も実は多彩な実践をしており、そういう実践があるから反復練習に一生懸命取り組める子どもが育っているというのが真実のようです。

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