教育委員だより No.56

                                                                  平成15年5月16日

                                                小牧市教育委員会教育長  副島孝

個人情報を考える

個人情報保護についての議論が、国レベルでもなされるようになり、個人情報の漏えいを防ぐ努力が各分野でなされるようになりました。たとえば、学校などでは住所や電話番号を記入した名簿を極力配らないようになっています。これは一面では非常に不便なことですが、悪用の横行という現実を考えると仕方のないことなのです。それでもいろいろな業者から、ダイレクトメールや電話を受けることがあります。私などその種の電話に出た際に、どこで知ったかを問いただすと、以前は名簿業者から買ったという返答がよくありましたが、最近は答えがありません。

名簿の入手が困難になってきたため、最近では直接各家庭にクラスの友達の住所や電話番号などを問い合わせる電話が増え、各地で問題になっています。尋ねる際に、学校の先生の名をかたったり、級友の親をよそおう方法は古くからありました。最近では手が込んできて、教育委員会や市役所、警察の名までかたっての問い合わせが、ひんぱんに行われています。学校にまで、その種の電話がかかるという、大変な時代になりました。これへの対処は難しいのですが、まず確実な方法は、相手の名前と電話番号を聞き、こちらからかけ直すと告げることです。まず、それで電話が切れますし、かけ直したとしてもメモした電話番号が後日の証拠になります。

さて、迷惑電話対策はそれで可能でも、それは個人情報保護の一分野に過ぎません。最近では学校でも、多くの地域の方、ボランティアの方と協力した取組が増えてきました。学校評議員制度も定着してきています。もちろんPTAは以前から学校を拠点に活動しています。そのような活動の中で、知りうる個人情報は決して少なくないでしょう。また、その内容も電話番号などでなく、家庭状況や人格にかかわることも考えられます。こんな個人情報が漏えいしては大変ですし、逆に訴えられる可能性すらあります。学校に関わっていただく方々には、機会あるごとに注意をお願いする必要があります。

もちろん、一方で学校や行政は閉鎖的で、情報が開かれていないとの批判がありました。これは反省すべきことであり、市でも情報公開を進めていますし、各学校でも学校公開日をはじめとして、開かれた学校をめざし努力しているところです。情報公開でいつも問題になるのは、マイナス情報の公開問題です。器物破損事件や生徒間の暴力事件が起こったなどの場合です。誰が起こしたのかはっきりしないときは、まだ出しやすいのですが、あの生徒がやったらしいという場合が問題なのです。

100人の罪人を見逃すことになっても、1人の冤罪者を出してはならない、という推定無罪の原則があります。刑法犯でさえ、判決が出るまでは容疑者でしかないというものです(もっとも、同時多発テロ以降は、100人の冤罪者を出しても1人の罪人を見逃さないのが正義だ、という風潮も強まっていますが)。校内の問題行動や不登校などのマイナス情報も、プライバシーには細心の配慮をしながら出していくことが、今後は必要になるでしょう。しかし、それはあくまでも、みんなで協力して良くしていこうとする関係の中で行われるべきものだと考えます。

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