教育委員だより No.67

                                                                  平成15年10月9日

                                                小牧市教育委員会教育長  副島孝

読書の秋に考える

読書に季節を感じたことのない私ですが、日の短いこの季節を「読書の秋」と呼ぶのはわからないでもありません(「スポーツの秋」とか「食欲の秋」とか、何でも秋は向いているようですが)。先日少年センターから「心にのこる一冊の本」というテーマで100字程度の文を書いてほしいと依頼され、思いのほか苦労しました。これは、小牧市健全育成市民会議で、年間事業の10月に「青少年に読書をすすめる市民運動の推進」とあるが、具体的にはどういう取組みをするのかという質問があったのに応えたものでしょう(派手なスローガンだけでなく、地味でも効果をあげるために具体的な取組みをするということが、多くの事業で行われるようになってきたことを喜んでいます)。子どもたちへの啓発を目的に、校長先生方からの原稿とあわせて学校の教室掲示用に使用されると聞いています。

そのなかで私の取り上げた本は、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』です。私にとっては、内容はともかく小学校5年生の時に、生まれて初めて買ってもらった思い出の単行本なのです。何度も読みましたが、その割に余り内容を覚えてないのが情けないところです。それでも、ひょんなことから2年間の漂流生活を送ることになってしまう中で、15人の少年たちが様々なトラブルを切り抜けながら成長する姿は、私の中に何らかの影響を及ぼしたように感じています。同じ漂流物でも、『ロビンソン・クルーソー』(三ツ渕小の後藤校長が取り上げています)とは異なる、個人と集団の力学を感じさせてくれました。読書には、きっかけと習慣が重要ですから、私の文はともかく、他の先生方の文が読書への誘いになればと思っています。

ニューヨークへ出かける前に読みたかったなと思った本(この本の発行は、今年の9月ですから、不可能な話なのですが)を、最近読みました。『未来をつくる図書館』(菅谷明子・岩波新書)です。ニューヨーク公共図書館(The New York Public LibraryのPublicは、公立とか市立と訳されることがありますが、実はNPOなんだそうです)が、貸本や市民の調査に対する支援以外に、どんな業務をしているかを実に具体的に記述してあります。ニューヨークの図書館をほんのちょっと見ただけだったのが、惜しくなるような気がしました。また訪れる機会があれば、今度はじっくり観察してみたいと思っています。

その本のなかには、新しいビジネスを芽吹かせる、芸術を支える、市民への情報源となる、障害者を支える、デジタル化でさらに機能強化するなど、ニューヨーク公共図書館を例に「図書館の進化」の姿が描かれています。9.11テロの際にニューヨーク公共図書館が果たした大きな役割について、私は本書ではじめて知りました。日本の公共図書館の多くが、「無料貸本屋」とやゆされる現状とは比べようもありません。ニューヨークのような大都市と比較して小牧市の状況を云々することが現実的とは思いませんが、せめて市民の調査活動の相談にのれる力を持った司書スタッフを充実させていかなければと痛感しています。

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