教育委員だより No.75

                                                                  平成16年1月23日

                                                教育長 副島孝

ブックスタートの現場を見る

ブックスタートは、イギリスのバーミンガムで子どもへの絵本プレゼントとして1992年に始まりました。当初は、子どもに文字を覚えてもらうことを主な目的としていたそうです。しかし、その後バーミンガム大学の調査によって、子どもの言葉や考える力にも影響があることも分かり、世界各地に広まってきています。小牧市でも今年度の夏から始まっています。先日、保健センターで行われている様子を見せていただきました。

小牧市でのブックスタートの方法は、保健センターでの4か月健診のときに、受付をして健診が始まるまでの間に、おすすめの絵本2冊と絵本リスト・アドバイス集などを、ブックスタート・パックとしてプレゼントするやり方です。もちろん単に絵本をプレゼントするだけでなく、その際ひとりひとりの赤ちゃんに絵本を使って、実際に読み聞かせを行っています。読み聞かせを実演しているのは、図書館で読み聞かせの講習を受けていただいたボランティアの皆さんです。

読み聞かせをしてもらっている赤ちゃんの表情は、とても柔らかく満足そうです。そういう赤ちゃんを見つめるお母さんやお父さん(当日はお父さんもみえました)もまた、とても柔らかな表情をしているのが印象的でした。文字も読めない赤ちゃんに絵本は早いのではないか、とお思いの方もいるでしょうが、絵本を見ながらやさしく話しかけてもらうと、赤ちゃんはとても喜びます。ときには本をなめたり、破ったりすることもあるかもしれませんが、そうやって赤ちゃんは本に親しんでいくのです。

実は、小牧市のブックスタートは、読書習慣を直接の目的にしているのではなく、親御さんに赤ちゃんへの接し方を体験してもらうことも目的にしています。発達心理学でよく言われていることですし、教育に携わる者は体験的に誰でも知っているように、小さい時に周囲から存在そのものを「よき(グッドな)もの」と思われて育った赤ちゃんは、成長の過程で道を踏み外すようなことがあっても立ち直りやすいのです。「よきもの」と思われている、と赤ちゃんが感じることの体験のひとつが、こういう読み聞かせやお話であると私は考えています。

親子をめぐる信じられないような、痛ましい事件が後を絶ちません。でも、自分たちが子育てをしていた時期を思い返してみると、けっしていつも子どもがかわいいと、ゆったりした気持ちで接していたわけではありません。疲れきっていたり、イライラしていたことも少なくありませんでした。特に、赤ちゃんがぐずって泣き止まない時などには。そんな時に役立つのは、愛情だけではなく、赤ちゃんが安心できる手だてなのです。ブックスタートの現場を見て、そんなことを感じてなりませんでした。

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