教育委員だより No.112

                                                                  平成17年2月16日

                                                教育長 副島孝

授業力向上研修会に参加して

「授業力向上研修会」は、Web小牧市教育研究所が主催する授業研究会で、基本的に参加は自由です。今回は社会科で、「話し合いをもとにした授業の組み立て〜コンセンサスを取り入れた歴史の授業〜」というテーマで、応時中学校の西尾友弘先生が模擬授業を行い、それを受けて意見交換するという形で進みました。本当なら西尾先生の実際の授業を参観することが望ましいのですが、なかなか授業時間中に集まることは難しく、結局このようなスタイルをとることになりました。社会科ということもあり、私も参加することになりました。

コンセンサスは授業研究では聞き慣れない言葉ですが、応時中で以前から指導いただいている南山大の津村教授による仲間づくりの手法です。多数決で決めたり、平均値で決めたりしないで、話し合いで全員が納得できる結論を出す手法です(この成果が出ているのか、応時中の生徒の話し合いは雰囲気がいいのが特長です)。模擬授業は江戸時代の学習の最後の時間を想定して、「江戸幕府が滅びた最大の原因は何か?」を学習課題に、「ペリー来航・日米修好通商条約・薩長同盟・世直し一揆・大政奉還」に1〜5の順位をつける展開でした。

まず個人で順位をつけます。その後、グループで話し合い、ひとつの結論を出します。各グループの結論を表にした後、全体での話し合いが行われます。最後は、最終的に自分自身の順位をつけ直して終わります。説明を聞くだけの授業ではなく、一人ひとりの生徒が自分で考え、考えを出し合い聞き合うことで成り立つ授業です。

教師相手の模擬授業ですから、実際の授業展開とは異なる部分もあったようです。ペリー来航と日米修好通商条約は、どちらか一つの方がよいように思いました(実際、この二つの順位で時間を費やしたグループがいくつかありました)。外圧・下級武士・一般民衆・支配階層などの重要度を、西尾先生は考えさせたかったようです。大政奉還も他と同列では比較しにくいものでした。外圧・幕府と代わりうる勢力・一般民衆の意向ぐらいが、よいのではないでしょうか(ちなみに私の1位は薩長同盟でした)。また、グループで一つの結論を出さなければならないのかも、疑問です。ふだん見せていただく西尾先生の授業では、グループでの話し合いは個人の考えを吟味する場として位置づけられていました。

応時中学校は、生徒の授業への集中がすばらしい学校です(かつては、そうではありませんでした)。ですから、当然学力面でも飛躍的に向上しています。この研修会で、このように変わった理由の一端を知ることができました。応時中の生徒の授業への集中には感心しますが、一人ひとりの先生の指導力が特に高いとは思いません(失礼)。しかし、ある共通したものが存在するのです。学習目標の明確化、必ず毎時間取り入れられるグループでの話し合い、授業の最後の振り返り(方法は様々です)などです。一つひとつは、当然のことです。しかし、これを先生方が毎時間行っているところに、秘密があるようです。

申し合わせて実行することなら、どこの学校でも一応は可能でしょう。しかし、それでは授業は変わりませんし、生徒は変わりません。試行錯誤しながら全員の先生が試みる→生徒たちの変化を見て、納得する(コンセンサス)→生徒が進歩することによって確信に変わる。そんなところでしょうか。個々の授業には、疑問点も少なくありませんが、先生にも生徒にも、全体の勢いがあります。一方で、生徒は敏感に指導のレベル差を感じるものです。期待に応えられない指導には不満を持つものです。だから、先生方は大変です。

しかし、こういう苦労を背負い込む先生方は、なんと幸せな存在でしょう。本来の仕事で苦労する。これこそがすべての先生が望んできたことです。そんな学校の先生は幸せです。外部講師から刺激をもらいながら自分たちで実践の質を高めていくことなどにも、新しい学校づくりの予算を有効に活用しています(ただ外部の先生を呼ぶだけでは、十分な成果を望めるはずがありません)。学年末の忙しい時期にもかかわらず、30人ほどの参加がありました(参加人数に私自身は、ほとんど関心がありません。多くても少なくても、参加したい人が集まることが大切だと思っています)。参加した先生方は、きっと何かを得られたのではないかと感じました。

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