教育委員だより No.115

                                                                  平成17年3月18日

                                                教育長 副島孝

『いい学校の選び方』を読む

『いい学校の選び方』(吉田新一郎著・中公新書)は、題名から受ける印象とは異なり、保護者が私学や学校選択制の自治体で公立校を選んだりする際に、役立つ本だとは思えません。著者はもともと「いい学校のつくり方」を書きたかったようです。そして、「いい学校のつくり方」という目的では、成功しているように感じます。

「いい学校」(Effective Schools=効果的な学校)に関する研究を断片的には知っていましたが、「いい学校」のイメージを、これほど鮮明に具体的に記述したものには初めて接しました。私なりに受け取ったキーワードは、「絶えず学び続ける組織」としての学校です。現職の先生なら反発する方も多いことでしょう。こんなきれい事が実現できるのなら、誰もこんな苦労はしていないと。しかし、読み進めるうちに印象が変わってくるのではないでしょうか。これまで学校が努力してきた方向が、少し間違っていたのではないかと感じ始めます。「工場モデルの学校」という言葉に反発したり、衝撃を受けたり、考え込んだりすることでしょう。学校というものの一面しか見ていないのではないか、という反発はぬぐい切れませんが、だからこそ本質を突いているのではないかとも、私は感じました。

著者は、ビジョンの大切さを強調します。ビジョン(あるべきイメージ)がないからこそ、あいまいな目標しか立てられず、優先順位が不明確になり、たくさんの仕事を抱え込んで忙しくなり、一見仕事をしているつもりになってしまう。短期的には問題解決になるように見えるが、実は長期的には新たな問題をつくり出している可能性すらあるとまで言うのです。つまり、悪循環に陥っているのだと。

いろいろな問題が起きると、昔にもどろうという議論が必ず起こります。教育の問題も、例外ではありません。しかし、本当に昔は良かったのでしょうか。良かったとしても、本当に昔に返ることは可能なのでしょうか。それよりは、望ましい方向を見定め、その実現に向けて可能なことから優先順位をつけて努力するのが、私たちがとるべき態度だと考えます。

著者は、行政や学校(特に校長)の責務を強調しますが、それにとどまりません。親(もちろん父親も含めて)や地域が積極的に関わり、役割を果たしてこそ「いい学校」は実現できる(逆に言えば、それなしに「いい学校」は実現しない)と。PTAや地域が試みるべきだとする提案も具体的で、参考になります。教育委員会などが行っている研修や学校内での研究も、「学びの原則」を踏まえてないから効果が上がっていないとの指摘は重要です(これは私たちが克服しようと取り組んでいる課題でもあります)。

今の時期は、新しい年度の方向を定める重要な時期です。参考になることが少なくない本です。ただ、あまりに技術的、網羅的な感じを受けるところが気になります。以前、同じ著者の『会議の技法』(中公新書)を、途中で投げ出してしまったことがありました。そのときにも、同じような感じを受けたことを思い出します。

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