教育委員だより No.116

                                                              平成17年3月29日

                                                教育長 副島孝

人事担当者の眠れない夜

年度末は、人事異動の時期でもあります。教育委員会事務局でも、学校でも、異動内示がなされました。新聞で大々的に報道される(一般の職員まで報道される例を、私は他の分野では知りません)にも関わらず、小中学校の先生方の人事異動についての特色(悩みといったほうが正確ですが)については、あまり知られていません。この時期、ふだんは図太いはずの神経の持ち主でも、直接人事を担当する人は眠れない夜があるのが普通です。それはなぜでしょうか。

まず、次の年の学級数が決まらないことがあります。先生の数は、学級数に応じて決まることになっています。しかし、例えば学年120人なら3学級、121人なら4学級となるように、年度末になっても確定できない学校ができるのです。これが中学校の場合には、先生の総数だけでなく、教科ごとの先生の数に影響が出ます。そのため、最後まで読みきれないときには、本来は望ましいことではないのですが、期限付任用の先生(1年契約の講師)をあてざるを得ないことになります。

正規の教員をあてて、減ったときには転勤させる方法も、(余ってしまうという心配もありますが)もちろんあります。しかし、確定の時期は始業式の日となっていますので、担任が決まり授業が始まる日に先生を動かすような事態は避けなければなりません。もちろん各学校では、すでに春休み中に校内の組織や分担が決まり、活動も始まっています。しかし、予想もつかない事態が起きて、学級数が減る可能性はあります。そんな場合には、中学校なら、数校にも影響が及ぶことになってしまいます。危険性のある学校すべてに期限付の講師をあてれば、今度は講師の数が足らなくなることもあり、優先順位をつけて勝負(不謹慎な言葉ですが、担当者の偽らざる心情です)せざるを得ないのです。

もちろん人事担当者が、全責任を負うわけではありません。人事異動案に関しては、私を含め教育委員が承認しています。だからといって、担当者の気が休まるわけではなく、眠れないということになります。実は、私も2年間人事担当の仕事をしたことがありますので、このあたりの気持ちは痛いほどわかります。ちなみに私はこの時期に、毎晩ミステリーを読んでストレスを忘れるという習慣がついてしまいました。

このような前提の上で、異動案づくりが始まります。すべての学校を見渡して適材適所の配置をする、その結果各学校が組織として最高のパフォーマンスを発揮する、というのが理想ですが、なかなかそうはいきません。現実には、少なくとも数年先を見通し、急激な戦力ダウンを来たさないよう各学校に人材を送る、各学校がめざしている取組みに力を発揮してくれそうな人材を送る、くらいが精一杯のところです。だから、原則10年が限度となっている異動ですが、実際にはもっと短期間で異動する場合が多いのです(6年が限度で、平均3,4年で異動している県もある、と聞いて驚いたことがありました)。

異動する立場の先生から見ると、不満も多いと思います(人事は、一般にそういうものだとも言われます)。しかし私は、先生方ならほかの仕事をしている人とは違う受け止め方ができるのではないか、とも思うのです。それは、先生方はみんな、ふだんから子どもたちを対象に、いわば人事を行っているとも言えるからです。子どもたちに役割を与えてクラスをうまく組織することは、先生の力量の大事な部分です。顧問として関わることの多いスポーツを例にとれば、子どもたちの多くがピッチャーを希望したとしても、多分先生方はチームとして最も力を発揮できるように、希望していないキャッチャーやセカンドにも誰かがなるように勧めるはずです。

自分のこととなると、そんなことはすべて忘れてしまう、というのが現実でしょう。わがままではなく、個人の事情もあることでしょう。いつも希望に一任と書いてきた私のような存在は、きっと少数派なのでしょう。でも、必要とされて異動したのですから、ぜひ新たな環境で力を発揮してもらいたいと願っています。

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