教育委員だより No.118

                                                                  平成17年4月15日

                                                教育長 副島孝

ビジネス書の勧め

ビジネス書を教育の仕事の参考にしている教育関係者は、少なくないはずです。なぜなら、子どもに対する教師の役割は、ビジネス上の上司と重なる点が多いからです。上司に恵まれない部下が悲劇的なように、教師に恵まれない子どもたちはかわいそうです。よいビジネス書には、子どもへの指導や学校運営に参考となるヒントが詰まっています。しかし、当然のことですが、ビジネス書も教育書と同じで玉石混淆です。どういう本が参考になるのかを選ぶのは、自己責任というか自分の判断力にかかっています。いいビジネス書を選べる人は力をますます付けていくし、選べない人は低迷を続けるならよい方で、低下していく恐れさえあると言えます。

ビジネス書の一例として、『鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」』(勝見明・プレジデント社)をとり上げましょう。先日の教職員着任式で、以下のように使わせてもらいました。

イトーヨーカドーやセブンイレブンの会長をしている鈴木敏文さんが、興味深いことを言ってみえます。セブンイレブンでは社員に、「顧客のために」という言葉を禁じているそうです。「顧客のために」と考えるとき、どこかで「お客とはこういうものだ」「こうあるべきだ」という決めつけをしている。だから、「顧客のために」努力してもうまくいかないと、途端に顧客を責め始める。これに対し、常に心がけなければいけないのは「顧客の立場で」考えることであり、これがイトーヨーカ堂グループの基本となっていると。

ビジネスの世界のことを安易に教育の世界に適用することは戒めなければなりませんが、おそらく学校に置き換えれば、「子どものために」は禁句、「子どもの立場で」考えるということになるでしょう。「子どものために」と思って指導しているはずですが、このとき自分の経験から、子どもはこうあるべきだという考えや感情が優先しがちです。だから、思うようにならないと、お前たちのためを思って指導しているのに、なんで先生の言うことがわからないのかと、ますます子どもを攻めがちになります。

しかし、子どもは良い意味でも悪い意味でも、日々成長しています。取り巻く社会環境も、大人世代が子どもだったころとは大きく変化しています。もし、「子どもの立場で」考え、その心情も理解して指導したなら、指導の仕方は大きく違ってくるでしょうし、子どもの反応も変わるはずです。初任者の先生方は、子どもたちに一番近い世代です。早く仕事に慣れることは大切ですが、教えられる立場のときに抱いていた不満を、慣れるごとに忘れてしまってはなりません。「子どもの立場」を考えた場合浮かぶ疑問を、遠慮せずに先輩の先生方にぶつけてください。小牧市の先生方は、校長先生をはじめどの先生も、そういう疑問を頭から否定しない、信念を持ちながらも柔軟に考え対処する度量を持った先生ばかりです。新しい人材が入ったことで、さらに向上する、そんな学校や教師集団であって欲しいと願っています。

また、最近ひょんなことから、「かんてんぱぱ」で知られる伊那食品工業の社長(現在は会長)塚越寛さんの『いい会社をつくりましょう。』(文屋)を読んで、非常に感銘を受けました。違う業界の人の話を聞くとよい、とよく言われます。実際に意見交換できるのがいちばんよいのでしょう。でも、ビジネス書で擬似体験してみるだけでも得るものは多い、というのが私の経験則です。

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