教育委員だより No.125

                                                                  平成17年7月22日

                                                教育長 副島孝

学校への無理難題の記事に

最近、学校に寄せられる保護者や地域住民などの「無理難題」の話題が、新聞などで取り上げられるようになってきました。この問題について、小野田正利氏(大阪大)が日本教育経営学会で発表されたことも、契機になっているのかもしれません。小野田氏の調査では、「自分の子がケガをして休まなければならないので、ケガをさせた相手の子も、その間休ませろ」「親同士の仲が悪いので、学校では遊ばせないようにしてほしい」「石をぶつけてガラスを割っても、そこに石ころが落ちていたのが悪い」など、すさまじい例が紹介されています。「無理難題」を「学校の責任を超える要望・苦情」と定義しているのですから、当然こういう例が並ぶことになります。

実は、この傾向は何年も前からでていたようです。諸富祥彦氏の『子どもよりも親が怖い』は平成14年の出版ですが、前年の相談依頼で最も多かったテーマだと書かれています。この本にも、「子どものことに無関心(自分のことで精一杯)で、教師の声に耳を貸さない親」「教師の些細な言動にも目を見張り、執拗なクレーム攻勢で教師をノイローゼに追い込む親」「授業参観中に、昨日のドラマの話で盛り上がる親(父親はビデオを撮ることに忙しく、それが授業を妨害していることに気がつかない)」「子ども同士のいざこざがきっかけで、親同士がいがみあい、仲介役の担任教師を振り回す親」などと、書かれています。

しかし、この本には、実践的な提案がいくつもなされています。「親を変えるのはあきらめましょう」「目の前の子どもで勝負!」「学校でできることを精一杯やろう」と、発想を切り替える現実的なアドバイスをよくすると書かれています。しかし、「一流ホテルのリピーターで一番多いタイプは、実はそのホテルに滞在中、苦情を言ってきた人だそうです。(中略)そのような親は、教師の誠実な対応でいったん腑に落ちると、今度は一転して、教師や学校の応援団、強い味方になってくれることが少なくないのです」という一節が引用されているように、「保護者との人間関係づくりに積極的に打って出よう」という提言も行っています。

市内でもいくつかの学校で、保護者も含めた人間関係づくりの講習が行われています。誰の目から見ても評判のいい先生に対してまで苦情・要望が寄せられ、対処に翻弄させられる事態も起きる状況では、当然の対応です。もともと学校や教育委員会は苦情の多いところです。また、苦情によって自らを振り返る良い機会となった場合も少なくありません。

しかし、欠点を指摘して非難するだけでは、子育ての問題は解決しません。100点満点の教師や親はいない(両方を経験した私は、それを痛感しています)ことを前提に、言うべきは言いながらも、協力し合うこと以外に方法はありません。子どもへの教育にも支障が出るようでは、何のための要望・苦情かわかりません。建設的な議論ができる力を育てる教育が、遠回りなようでも最も重要だと感じています。

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