教育委員だより No.133

                                                                  平成171027

                                                教育長 副島孝

『ドラゴン桜』にはまる

漫画(コミックと言ったほうがよいか)を読むほうではありません。しかし、全然読まないわけでもありません。面白いものは読むし、つまらないものは読まないというスタンスです。最近はまったのが(もう遅いと言われそうですが)、『ドラゴン桜』(三田紀房・講談社)です。倒産寸前の落ちこぼれ高校の再建を依頼された弁護士が、3年生から東大合格者を出して学校を建て直すというストーリーです。

こう聞くと荒唐無稽でリアリティーのかけらもないように感じますが、読み進むとそういうこともあるかもしれないと思わせるから不思議です。東大の理科T類をターゲットにすることにも、合理的な理由が描かれています。東大の入試問題が良問ぞろいだという話も、説得的です。内容の中心は、1年足らずの間に合格可能なレベルに持って行くための受験指導です。このテクニックを学ぼうという読者(若手サラリーマンが読者の「モーニング」誌に連載中で、単行本の購入者の過半数が母親層だそうです)も、少なくないようです。

しかし、教育関係者のほうが、内容的にはずっと興味をそそられると思います。それは、単なる受験指導ではなく、授業論、指導論、教育論、学校論が、非常に刺激的に描かれているからです。刺激的という意味は、建前の教育論を徹底的に批判し、具体的に役に立つ(それが子どものためで、建前のきれい事など言い訳にすぎないと言い切る)立場に徹するところにあります。実にこたえる批判ですが、的を射ていると思わざるを得ません。

数学や英語、国語など、教科の指導法にも学ぶべき点が少なくありません。子どもの発達論や家庭の役割(受験に挑戦する二人は、ともに家庭に問題を抱えています)などにも、目配りされています。首をかしげるような事例もありますが、納得できるものが多くあります。小学校や幼児教育への言及もあります。教科の指導などでは、中学校の先生方には参考になる面も多いと思います。

実はマンガ喫茶に通って10巻を読み通したのですが、買ってもよかったと思っています(コミックを買うことには抵抗があって、『のだめカンタービレ』以外買ったことがない)。なかで紹介されている本の中から、『コーチングの技術』と『ドラゴンイングリッシュ』を買ってしまいました。特に後者は、英作文も実は論理が決め手なのだということを知り、感激しました。

スポーツで全国大会をめざすことには好意的でも、東大をめざすことには否定的にとらえる向きがあります。しかし、それも偏見の一種でしょう。だまされたと思って、一度マンガ喫茶へ行ってみてください(もちろん買う方がよいと思いますが)。どこが参考になり、どこに反発を感じたかによって、教育関係者としての生き方や力量を知ることができる、と密かに思っています。

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