教育委員だより No.138

                                                                  平成171215

                                        教育長 副島孝

通学路を歩いてみてください

年の瀬を控えているのに、続発する悲しい事件を話題にしなければならないのは残念です。これから先も、この問題に明るい見通しはないという、絶望的な気分の方も少なくないでしょう。でも、こういうときだからこそ、展望を持った対応をしなければと考えています。それは、これまでの対応が、長い目で見ると、次の新たな問題の原因を作ってきたのかもしれないからです。子どもに関する多くの事件が、これまでも起こってきました。そしてその都度、対応策がとられてきました。良かれと思ってとってきた対策の積み重ねが、最も育てなければならない子どもたちの社会性を奪うという結果をもたらしたのではないかと、各方面から指摘されています。なかには、新たな犯罪者を生み出す原因にもなったのでは、とまでの厳しい指摘もあります。

「毎日教育メール」に連載の堀一郎氏のコラム、「地域の再生を」には考えさせられます。日本中で地域の道を歩く人を見ることが少なくなった。私が子どもの頃は、道草をするのが子どもたちの仕事であり、地域のお年寄りたちも、そのあたりもわかって見ていてくれた。いま、この「地域」はなくなったのだろうか。奈良の事件の後、声かけを禁止する条例ができた所があると聞く。地域をばらばらにしてしまい、さらに地域が破壊される。対処療法的な施策が打ち出され、抜本的な対策は後回しにされているように見える。私の住む地域の小学校は、保護者による子どもたちの送り迎えが始まっている。当面対策としてはやむを得まい。オランダなどヨーロッパでは、親が送り迎えするのが当然である。でも、日本ではかつてのように地域全体で子どもたちを守ってほしい。子どもたちを大きく育てるためにも、地域力が必要だと思っている。こんな趣旨のものでした。

小牧市でも、安全マップの作成・再確認など通学路要注意箇所の把握、子ども110番の家の確認と挨拶、防犯ホイッスル携帯や使用法の確認、校区に関わる不審者情報の地域への回覧、防犯教室の開催、下校指導の強化など、対策の点検と見直しを実施しています。警察はもちろん少年センターをはじめとする市や地域のパトロールも、強化されています。来週には小牧警察署と合同で、全小学の校長・PTA代表・校区交通安全推進協議会(区長さんや地区の交通委員さんなどがメンバーです)の代表による連絡会議を開き、さらなる対応を協議します。

堀氏も指摘するように、地域の方々にできる範囲でも通学路を歩いていただくか、せめて自転車で通っていただくことが、安全や地域再生の決め手となるのではないでしょうか。事実これを機に、通学路を歩いてみたという方は少なくありません。先日も、通学路で子どもたちに声をかけたらギョッとされたとか、自分の子や孫を迎えに途中まで出かけたが、不審者を見るような目で見られたなどという話をうかがいました。今の時代なら、あり得る話です。定期的に見回っていただく方には、ジャンパーや腕章を用意していますが、思い立った時にも役立つのが、「声かけワッペン」です。少し時代に先がけすぎたのか、必ずしも順調に普及しているわけではありません。しかし、今後は先にあげたような場合にも役立つのではないでしょうか。

来年度予算編制の時期を迎えていますが、安全体制の強化とともに子ども自身が対処方法を身につける講習を全学校で実施したいと考えています。できれば、身を守ると同時に人との接し方、社会性を育てるという視点を忘れない方法を検討します。通学団による集団登下校は、現実にはもめ事の種にもなっています。子ども同士にとどまらず、親同士のトラブルにまで発展する事例も少なくありません。1年生と6年生の年齢差は2倍です。軋轢があって当然なのです。子ども会も同じですが、こうした軋轢の中で、子どもたちは社会性を学ぶのです。近所の年齢の違う子どもたちが自然に誘い合って遊ぶ光景が消え去った今、こういう犯罪を多発させる遠因を絶つためにも、子どもたちを囲い込むだけでない対応を心がけなければと思っています。

目次へ戻る