教育委員だより No.159

                                                                  平成18920

                                        教育長 副島孝

コーチングと学校

『「教師力×学校力」ダイナミック変革への実践本』(河北隆子・脇經郎、明治図書)という本が出版されました。変わった、いやちょっと変なタイトルだと思います。第一、覚えられないですね。著者も気にしているようで、「はじめに」はタイトルの話題から書かれています。著書にはすでに、『教師力アップのためのコーチング入門』という本があります(先生方にはよく売れているようです)。しかし、個々の教師のパワーだけでは学校教育の問題は解決しない、学校としてのパワーも必要なのだ、という確信が本書には込められているのでしょう。

この本は、主としてビジネスの世界で組織風土改革のコンサルティングを業務としている著者が、応時中学校という学校現場に半年間関わった中から生まれました。学校にとっても、著者にとっても、異文化体験とも言うべき出会いがあったようです。まず下世話なことを言うと、コンサルタント料は普通学校が校内研修で考える額より一桁多いものでした。また、研修内容も、講義や実習を受けて終わりではなく、次に来るときまでにこれだけは絶対に完了しておいてください、という大変な(ある意味では当然な)ものでした。

実はどんな組織でも同じなのですが、学校もまた生徒への指導や問題への対応などで余裕のない日々を送っています。全職員を対象とした研修を何度も持つ時間はありません。そこで応時中では、主に運営委員会のメンバー(校長、教頭、教務・校務・学年主任など)が研修に参加しました。そして学んだ手法が職員会議や学年部会を始めとする各種の部会に応用され、次第に全職員のものになっていったようです。授業にも使われているなと感じることもありました。50ページに及ぶ応時中の先生方の書かれた文章は、途中経過を知る私には感動的なものでした。

著者の方法は、学校向けにアレンジされたものではありません。基本的にはビジネスの世界で行うのと同じ方法です。多分、あらゆる組織に共通する方法だとの自負があるからなのでしょう。応時中ではもちろんそれを咀嚼しながら、学校の実情に合わせています。しかし、自己流で安易に変更することは避けているようです。リンキンボム(LinkinBomb)とかチームビルトなどの言葉がそのまま使われているところに、その姿勢を感じることができます。

本書の後半はかなり実践的な方法が載せられていますが、この本を読んだだけで各教師や各学校が簡単に適用できるとは思いません。よく知られるようになってきましたが、応時中は南山大の津村俊充教授の指導でラボラトリー方式を取り入れた人間関係づくりに取り組みを続けてきています。また、岳陽中元校長の佐藤雅彰先生の指導を受け、学ぶ側に焦点を当てたしっとりとした雰囲気の授業づくりに取り組み成果を上げています。応時中はその上に立って、学校としての更なるレベルアップを意図したのですから。

これまで学校づくりというと、カリスマ的な校長のリーダーシップが注目されがちでした。しかし本書では、ぐいぐい引っ張る従来の指示命令型のスタイルではなく、相互に高め合うチームメンバーを育成し、成果を創り出す新しいスタイルのリーダーシップを目指しています。トップダウンでリーダーだけが脚光をあびる組織は、実はあまり成果を上げていないことも多いものです。カリスマ性を持ったリーダーではなくても、組織にはリーダーシップが必要です。「教師力×学校力」の面で、本書が参考になる点の多いことは保証できます。

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