教育委員だより No.169

                                                               平成19115

                                        教育長 副島孝

2007年問題の年に

新しい年、2007年を迎えました。もう何年も前から「2007年問題」として騒がれてきた年が、とうとうやってきたわけです。言うまでもなく「2007年問題」とは、団塊世代の大量退職に伴う諸問題のことです。特に現場での技能・技術の継承問題が注目を浴びています。様々な分野で深刻な事態が生じていますが、教育の世界でも例外ではありません。だからこそ、何年も前から各地域で先を見通した施策が実行されています。

教育の世界も、理念ややる気だけで通用する世界ではありませんから、地味な技術の継承ができなければレベルダウンは免れません。これまでは時間をかけた経験の積み重ねで継承されてきたのですが、大規模な世代交代の時期にはそれでは間に合いません。こうした場合、すぐに研修の充実が叫ばれます。小牧市でも研修内容の見直しを行い、参加型研修、選択型研修、応募型研修、研修内容や講師の質的向上、自己研修・校内研修・教委研修の役割の明確化など、考えられる手だてを講じてきました。

しかし、これで十分だとは考えていません。そんなとき、「現在行われている研修で社員の役に立っているものがいったいどれくらいあるだろうか(ちなみに、この状況は役所や教員の世界では、もっとひどい)?」という刺激的な記述のある、『「学び」で組織は成長する』吉田新一郎著、光文社新書に出会いました。日本におけるほとんどの組織で行われてきた学びは、ただ講師の話を聞かされるだけの「やらされるだけ」「役に立たない」「楽しくない」「身につかない」研修のみだった。どうすれば組織のなかに効率的で「成長できる」学びを生み出すことができるか、という問題意識で本書は書かれています。

非常に具体的な内容で、参考になる点が少なくありません。これはいただきだと思ったのが、「メンタリング」です。メンターと呼ばれる先輩が、経験の浅い人に対して、自らモデルを示す形で指導・サポートするプログラムのことです。同じ部内は避けた方がよいとも書かれています。同じ部内では、サポートし合う関係よりも評価し合う関係の方が勝ってしまうからという助言も納得できます。メンターの側にも学べることが多いというのも同様です。

これは、これまでの初任者研修に欠けていた視点です。他校勤務の数年先輩がメンターを務める仕組みは、お互いの成長に寄与できそうです。大先輩の指導教員とは違った関係が築けそうです。また、情報交換や相談に初任者の「メーリングリスト」も有効でしょう。せっかく教員11台のコンピュータが配備できたのですから、効果的に使わない手はありません。「メンタリング」もメールを主とした方が現実的です。

このように非常に参考になった本ですが、これまでの『会議の技法』『いい学校の選び方』『校長先生という仕事』にも共通する欠点があるように感じました。それは、記述の一つひとつは具体的で参考になるのですが、一冊の本として読む場合余りにも構成が整いすぎていて読み続けにくいということです。読者の勝手な言い分かもしれませんが、読み進むにつれて内容に引き込まれる喜びが実用書にもほしいのです。

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