教育委員だより No.186

                                                               平成1983

                                        教育長 副島孝

アクションリサーチ研究会に初めて参加

学校が休みになる夏ですが、この時期は全国でさまざまな研究会が開催される時期でもあります。先月は全国公立小中学校事務職員研究会(全事研)の今年度全国大会が名古屋で開かれ、本部研究分科会(この分科会だけで1000人を超えるという規模にビックリ)というところの助言者を務めてきました。しかし、自分自身が学ぶ機会も必要です。数年前から参加したいと考えていた研究会に、やっと今回参加できました。

それは、毎年8月の1,2日に開催される「教育のアクションリサーチ研究会」です。この研究会は、研究者と実践者のネットワークづくりをめざしているもので、私はアクションリサーチという言葉自体、今年になって『カリキュラムの批評』(佐藤学・世織書房)を読んで知った程度ですから、おっかなびっくりの参加でした。それでも、小牧からの参加者と一緒に、会場である熱海へ向かいました。1日目は、それぞれに分かれての検討会(私は授業づくりの部会に参加)と全体会「高校学びの広場から:高校での授業実践改革に学ぶ」。2日目は、16グループに分かれての授業・学校づくり事例検討会、続いてシンポジウム「これからの授業研究と教師の専門性開発」でした。

1日目の事例検討会では、東京のある小学校での授業ビデオを見て、グループや全体で話し合いました。たまたま組んだ4人グループのメンバーが、実践校(岳陽中、別府青山小など)の先生方でしたので、指導案や研究協議について日頃疑問に思っていたことを、お聞きすることができました。それは、事前研をしないことは理解できるが、授業を見てもねらいがよく理解できないほど簡単な授業案で本当によいのか。参観者が学んだ点を事実をもとに発言するのはよいが、それだけで本当に授業者や参観者の向上につながるのか、ということです。

指導案の内容について、青山小では校長が事前に参観者に役立つ内容になっているかの視点から助言していた。批判に終わらず、かつ言い放しで終わる協議にならないように、残された課題を明確にして協議を終わるようにしているなど、実践校ならではのお話が聞け、参考になりました。また、助言者から、次のような強い口調のコメントがありました。「コの字型の机配置、4人グループでの話し合い、児童の発言が続くなど、一見授業が成立しているように見えるが、実は学びが成立していない。最近よく見られる現象だ。教師が本気で教えていない。教材に格闘していない。子どもの発言に驚いていない。つまり、授業が単なるルーティンワークになってしまっている。このニヒリズムをどう克服するかが、大問題だ」

また高校での実践は、授業研究が困難と言われてきた高等学校でも、授業改善による学校づくりが徐々に広まりつつあり(もちろん同時に多くの困難点も指摘されましたが)、有効性が実証されつつあることを感じました。夜の懇親会では、お会いしたかった何人かの方とお話ができ、小牧市でのご指導をお願いすることもできました。

2日目の事例検討会では、二つの学校の授業ビデオを見て、意見交換を行いました。提案の先生の説明と子どもたちの姿のずれ(ここに出てくる先生方は本当に謙虚です)が、とても印象的でした。参加者全員がコメントをしなくてはならず、それはそれで大変ですが、色々な立場の方の発言が参考になりました。なかでも大学院生からの、現場を尊重しながらも鋭く切り込む発言を頼もしく感じました。

最後はメインのシンポジウムです。提案者は、的場正美(名古屋大学)、寺岡英男(福井大学)、佐藤雅彰(元岳陽中校長)、佐藤学(東京大学)の4人、司会は秋田喜代美(東京大学)という方々です。特に的場先生は、Web教育研究所のアドバイザーをお願いしている柴田好章准教授の先生に当たる方でもあり、授業研究を基にした学校づくりの意義は認めつつ、厳密な授業分析を行うことの重要性を指摘されました。「学びの共同体づくり」関係の講師だけでない人選に、この研究会の健全性を感じました。

各提案者(もちろん司会も含めて)それぞれが魅力的で、胸に残る発言がたくさんありました。なかでも佐藤学先生の発言は、胸に刺さりました(以下の内容は私が理解した範囲であり、文責は私にあります)。「教師の専門性には、二つの側面がある。一つは理屈だけの対極としての、技と型を身につけた職人としてのクラフトマンシップ。二つめは知識と判断を備えた専門家としてのプロフェッショナルである(秋田先生からの、それに加えて何を誇りに思うかという意味での〈倫理〉も必要ですね、という指摘もありました)」

「学校の授業研究が教師を育てる。そのためには授業を良し悪しで評価しないことが重要だ。授業中にどんな事実が起きたのか、それはなぜ起きたのかを理解できなければ評価などできない。これまでの授業研究は助言のし合いだった。事実を基にその場で学んだことを語ることが大切だ。厳しさは、〈ひとり残らず学びに参加していたか〉を問うことで保たれる。だが、教師の育ちは校内研究だけでは不十分であり、それを補うのが校外のサークル・研究会である」

充実した日々が過ごせましたが、おかげで八雲町児童交流団の結団式にも、解団式にも参加できませんでした。残念でしたし、申し訳なく思っています。

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