教育委員だよりNo.190

                                                               平成19928

                                        教育長 副島孝

学校建築の考え方

教育委員の視察で福岡県に行ってきました。今年の視察のテーマは学校建築です。福岡市立博多小学校とうきは市立吉井中学校の2校を見せていただきました。どちらも建築賞を受けている学校です。特に博多小学校は、『学校をつくろう!』(工藤和美、TOTO出版)を読んで以来、一度行ってみたいと思っていた学校でした。

どちらも建築後6,7年過ぎています。完成してすぐに行くのが普通なのかもしれません。しかし、新築の建物はとかく良く見えるものです。何年か経って、はじめて見えてくるものもあると考えました。

博多小は都会の真ん中にある、伝統ある4校(博多山笠を出す4地区でもあり、現在でも地区ごとの結びつきは深いそうです)が統合してできた学校です。廊下部分(移動のための廊下ではなく、これもひとつのスペースという概念)の両側に教室とフリースペースが並び、教室ごとの横(普通の学校では廊下側)のしきりもない、実にオープンな造りの学校です。職員室もなく(職員ラウンジはあります)、階ごとに教師コーナーがあります。統一の昇降口もなく、学年ごとの昇降口に外階段で直接上がります。5階建て(5階は通級教室、教室は2〜4階)で、プールは屋上、体育館は半地下という、都心ならではの配置です。

特別教室なども数は限られますが工夫があり、スペース的に実際以上の余裕を感じさせられます。大階段を利用した表現舞台も、実際によく利用されるものとなっています。すべてオープンで死角がないため、イジメや教室の荒れなどは、すぐにわかります。もちろん良い面ばかりではないでしょうが。何十回と持たれた校舎設計に関する話し合いはあったものの、使用してみて気づくことは少なくないとのことでした(先生たちからの意見聴取は内装に関しての最終段階だけで、完成したら教頭や教務主任の居場所がなかったそうです)。

一方、吉井中は田園風景の中というロケーションです。2中学校の統合で旧運動場などの部分に建設したものだそうです。普通教室棟4階建て、他の部分は2階建てという構造です。地元産の木材をふんだんに利用(玄関や昇降口の扉も木枠)した、心休まる内装です。教室内にロッカーを設置せず、廊下をはさんでロッカースペースや女子用更衣室を配置するというものです。空調を予定していた設計のため風の通り抜けが悪いとか、2階建て部分の屋根の照り返しで暑いとか、トイレのドアなどに学校用としては耐用性に欠ける建具があったなど、やはり問題はあるようです。

両方の学校とも、コンペ方式で設計業者が決められたもので、随所に設計の技量がうかがえるものでした。地元との検討会の実績が、完成後の活用にもつながることが理解できました。また、バリヤフリーへの対応や上履きのまま入れるトイレ、教室への電話設置など、今後の小牧市での学校建設に参考になることが多くありました。

『「未来の学び」をデザインする』(美馬のより、山内祐平、東京大学出版会)によれば、ハモニカ校舎のような伝統的な空間は、高い独立性と自己充足性を持っているが、静的で、受身で、画一的で、抑圧的という思想が背後にあると述べられています。ハモニカ校舎からの脱却は、問題解決型のグループ学習のような活動と対になっており、壁をただ単に取り払うだけで従来の授業を行うのでは、隣の音が丸聞こえという騒々しい環境を作るだけだ、とも記述されています。

学校建築というハード面と、教育面や地域との協働というソフト面とが、うまく調和してこそ、「学校はまち、まちは学校」(博多小建設のコンセプト)が実現するのだと痛感した視察でした。

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