教育委員だよりNo.227                                                                                            

平成20129

教育長 副島孝

ルールと例外と応用と

『教育学部教師の講義日記』(伏見陽児、星の環会)は、千葉大学教育学部の小学校課程の科目「教え方と子どもの理解」の記録です。大学の講義(と言っても実験などもあり、楽しそうな雰囲気です)をひとつの授業実践としてとらえ、まとめたものです。私自身が若いころ参加したことのある極地方式と仮説実験授業が、教材として主に使われているので親しみを感じました。

この本のひとつのテーマは、個別の知識ではなくルール(一貫して説明できる考え方)を身につけることの有効性と、例外的な事例のとらえ方です。哺乳類の世界では「かたち」の違いで肉食動物と草食動物との区別できるというルールと、「とがった歯」「側面の目」「柔らかい足の裏」を持つパンダ。越後・越中と越前の間に、なぜかある加賀。こういった事例を検討することで、例外を扱うことがルールの有効性を妨げないことを明らかにします。

一方で、学習したルールを日常生活に生かすことの難しさも明らかにします。三角形の面積の公式には、底辺×高さ÷2のほかに、3辺の長さから算出するヘロンの公式があります。これが今でも土地測量ではさかんに使われています。実際の土地を測る場合に、誤差の最も少ないのが長さを測ることだからです。先月行われた織田信長サミット関連のリレー講演会で宮大工の小川三夫さんが、いかにも職人といった語り口調で、「お寺やお宮の図面を描かせると、紙に書くより実物大の大きさで地面に描くような子が大成する」と話されていたのを思い出しました。

ほかにも、台風の進路が日本列島近くで右に曲がることと貿易風、酸味のある果物のジャムにはほうろう鍋を使うこと、グランドピアノの形の理由、切れにくいのはピンと張ったロープかゆるんだロープかなど、ルールを知っていてもそのまま日常生活に応用できるわけではないことを学びます。これは最近よく言われる、応用的な学力をめざす授業にも使えそうな材料です。

「例外のない規則はない」と言います。ルールには必ず例外があります(ルールには適用範囲があるという言い方もできます)。かたくなに例外を認めない原理主義者もいますし、例外を別に何とも思わない日和見主義者もいます。でも実は、例外はとても面白いところなのです。ここに目を付けると授業が面白くなることを、教師は経験的に知っています。現在の大学での教師養成教育の一端を知ることができました。

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