教育委員だよりNo.240                                                                                            

平成21514

教育長 副島孝

授業方法と学力・意欲

連休も終わり、また新たな気持ちで仕事に向かう時期です。4月5月の恒例事業、非常勤講師等への研修会の私の分が終わりました。前から、今年は「学習内容と日常生活」というテーマで、教科で学ぶ内容と日常経験している内容とが結びつけて認識されているかを体感してもらうことを計画していました。今回は理科を例にして、「吐く息には(吸っている空気中には、20.9%の酸素が含まれているのに対して)何%の酸素が含まれているか」という問題に答えることと、「人工呼吸」の知識など(問題は他にもいくつか出しました)から、関係に気づいてもらおうというものです。

実は前日某所で、ある教育社会学の論文を紹介されました。中学校理科の授業方法と学力(TIMSSの結果を利用)の関係を分析した内容です(実際には新旧の学力観や学力の階層差を、さまざまな統計手法を使って定量的に分析しています。ただし、ここで紹介するのは、その論文のほんの一部でしかないので誤解されないように。興味深い内容でした。実験調査型は負の効果がある。つまり実験や調査を多く取り入れた生徒は学力が低い、としているのです。

理科に興味を持たせ、理科の学力をつけるためには、実験を多くすべきだと言われることがよくあります。実際に施策として実施しているところも、少なくありません。『日本理科教育史』(板倉聖宣、仮説社)という厚い本の増補版が、最近出版されました。拾い読みをしているのですが、児童(生徒)実験運動は何度も提唱されているようです。特に、第一次世界大戦後の理科教育ブームの中でのものが有名です(大正自由主義教育の中では、「教授」よりも「学習」という言葉が好んで使われたことも、興味をひきます)。しかし、そこでも、結果としては失敗だったようです。

設備が足りない、時間が足りない、という問題をクリアしても、やはり思うような効果は示されなかったと、当事者が書き残しています。だからといって、理科の授業に実験を取り入れることに意味がない、などと言うつもりはありません。ただ実験を多く取り入れるというだけでは、効果は期待できないことが証明されただけです。どのような実験を、どんな順序で、どのように取り入れるか、という方法が必要だということです。

ところで先の論文では、社会日常型の授業は、正の効果がかなりあると指摘しています。社会日常型とは、「技術が社会に与える影響について学ぶ」「学んだことを日常生活に結びつける」「学んだことをクラスで発表する」授業です。実は今回の研修では、これを提案したのですが、日常生活との関連を意識させることは、単なる学力だけでなく、PISA型学力に代表される応用的な学力や授業への関心の面でも、効果があるように思われます。

今年初めて講師になったという人も、少なくありませんでした。疲れ気味の様子も見て取れました。日常生活と学習内容を結びつけることが、自分自身いかにできていないかを知るとともに、単なる勉強だと捉えていたことがらが、日常生活や暮らしの中での見聞と密接に結びついていることを知る喜びや興味とつながるきっかけになったら、うれしいのですが。

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