教育委員だよりNo.274 

平成25527

教育長 安藤 和憲

学校訪問での気づき1

 

 5月13日から学校訪問がスタートしました。教育長の職務の中で、学校を訪問する機会のあることは、とても幸せなことです。なぜなら、直接、学校の空気に触れることができるからです。空気とは、言い換えれば「風土」です。それは、それぞれの学校の中で根付いてきた伝統のようなものかもしれません。廊下ですれ違う子どもたちの様子も、学校によって微妙に違います。公開授業で各教室を回ると、瞬時に、子どもと教師の関係性が見えてきます。関係性の良い学級は、参観者になど目もくれず集中して学習活動が展開されています。そこで見ることができる子どもたちの瞳の何と美しいことか。そして、必ずそこには、子どもたちをしっかりと包み込む、柔和な表情の教師がいるのです。信頼関係に裏打ちされた授業は、見るものを魅了します。どの学校にもそんな光景が展開されていました。

 私は、各学校を訪問する中で教員にお願いしていることがあります。それは、子どもの心の居場所としての学級づくりに、全精力を傾注して欲しいということです。学級の一人ひとりの子どもたちが、お互いの存在を認め合い、支え合える風土の漂う温かみのある学級・・・。子どもの意欲の源は、こんな学級の雰囲気から生まれてくると信じています。

 ある中学校での特設授業の中で、生徒たちのこんなやり取りが耳に入ってきました。それは3年生の英語の授業でのことです。学習課題は、現在完了形を使った英文づくりでした。導入からテンポよく進み、サッカーの中田英寿選手をとり挙げて現在完了形の例文が示されました。セリエAで活躍した中田選手を紹介するため、イタリアの国旗を黒板に掲示しました。何気なく黒板に張ったイタリア国旗は左右が反対でした。すかさず、A君が、斜め前のB君に、小声で伝えました。「あの国旗、右が赤じゃない?」B君いわく「どうやったら、先生気づいてくれるかな」。二人は、心配そうに授業の先行きを気遣っていました。ふと、教室の後ろを見ると、先輩教員が、授業者に気づくように、「反対だよ」とジェスチャーを送っていました。もちろん、授業者には伝わっていません。しばらく授業が進んでいった時、授業者が間違いに気づき、国旗の向きを変えました。その時、A君がB君に囁きました。「やっと気づいてくれたよな」嬉しそうにうなずくB君。私は、この数分の間に起こっていたやり取りの中に、生徒や教員との良好な関係性を見ることができました。この日の訪問の一番の収穫だったという満足感で、心地よく一日を終えることができました。これからの訪問の中で、どんな新たな発見ができるか楽しみにしています。

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